エアコンの販売・工事に携わる立場にあって、「最近の高性能な住宅(高気密・高断熱)に最適なエアコンは何がいいのか?」
と聞かれたら、正直言って即答できない状態がつづいていました。
工務店さんに6畳用で十分と言われれば「そうなんですか?」
と言うしかないし、1Fと2Fに1台づつあれば十分と言われれば、「ええ!そうなんですか!」と言うしかないし。
そうした状況から少しでも改善しようと思いまして自分なりの答えを出してみました。勉強不足と思い込みで不十分な部分は
改善していきますので、ご意見・ご指摘なども歓迎いたします。
◆◆◆住宅基準の分類◆◆◆
私が言うまでもなく、日本は南北に長く山や海の影響で地域によって気候が違います。
そこで、右の図のように住宅の省エネルギーによる地域区分がなされています。
そしてこの地域区分に応じた住宅性能が求められています。
平成11年基準では、Q値(熱損失係数)が設定されていてましたが、
今は、平成25年基準というのになって、UA値(外皮平均熱貫流率)が設定されています。
つまり、こうした数値を知らない自分たちが適切な能力を選定はできませんね。
エアコン選定の際には必要な情報を集めるのが先決です。では、必要な情報は何か?を次から見ていきます。
◆◆◆エアコンの負荷計算◆◆◆
エアコンの負荷計算という考え(理論)は以前からあって、潜熱、顕熱の考えや貫流熱、日射、内部発熱を考慮して計算されます。
自分には出来ませんが、きっと気密住宅の冷房・暖房の必要能力もこの負荷計算から算出できると思います。
ただ、通常はメーカーがカタログに冷房・暖房の能力と畳数の目安を表示しているので、我々はそれで十分でした。住宅の性能が上がるまでは。
ちなみにメーカーのカタログ値はどれだけの冷暖房負荷を基準にしているのかを14畳用でみてみます。(14畳は、高気密・高断熱住宅を検索すると、
これ一台で1軒の冷暖房がまかなえると出てくる機種です。)
機種:ダイキン製S40TTEP、2016年モデルより
| 畳数の目安:A | 定格能力:B | 想定負荷:B/A |
暖房 | 11〜14畳(18〜23u) | 5.0Kw(0.6〜7.5) | 217〜278W/u |
冷房 | 11〜17畳(18〜28u) | 4.0Kw(0.6〜4.5) | 143〜222W/u |
右の表を見てなんとなく察しがついたかもしれませんが、業務用のエアコンを選定する場合はまさに〇〇W/uが活躍します。
業務用エアコンの場合は今でも冷房が重視されていて、普通の事務所なら200W/uかな?火を使う飲食店なら300w/uはみないとなど。
脱線はこの位にして、本題に戻ります。
◆◆◆14畳用エアコン◆◆◆
冷暖房の負荷計算を調べていくと色々なプログラムがあるようでした。SMASHとかAE-Sim/HeatとかQPEXとかHEAT20とか。
でもそれらを学ぶのはチョットと思っていたら、設計事務所の松尾和也先生が簡単な式を紹介されていました。
C値はまだ紹介していませんでしたが、uあたりの隙間面積(気密値)です。以下の式ではQ値とC値で「住宅性能」を年間最低温度で「住宅の区分地域」をカバーしているのが素人でもわかります。
必要暖房能力=(Q値+C値/10)×その部屋の面積×(設定温度−その地域の年間最低温度)
さて、関心してる場合じゃなくて14畳の根拠を数値を入れて検証してみます。Q値:1.8、C値:5.0(これは、ミサワホームV地域の住宅性能。ネット上で調べたので確認はしていません。)
40坪(132u)、設定温度:22℃、最低気温(-1.7℃:前橋市)。
その値は、7195W。14畳用の定格能力は越えていますが、前の表をよく見ていただくと5.0Kwのとなりに0.6〜7.5とあります。これは、エアコンがインバーターという能力を可変する機能がある表示です。
つまり、最大値は7500W。なんか、仕組まれていた気分ですが事実なのでしょう。14畳用1台で40坪の家が間に合います。最低温度を入力しているから安全率もあるんだと思います。
ただ、エアコン屋の立場から一言だけ言わせていただければ、暖房側の最大値が大きいのは霜取り時間を短くする為ですし最大値付近の運転は電気代もかかって省エネではないのでこの上の機種を選定して下さい。
◆◆◆計算式◆◆◆
上の松尾先生の式は、スッキリしてて大変いいと思います。
ただ、自分は似たような式を以前から知ってました。20年ぐらい前からコロナの床暖房のカタログに
「簡易計算法」として。床暖房はエアコンのように空気を温めるのではなく、伝導熱や輻射熱を利用した暖房なのでエアコンと比べて能力が小さくてすみます。
データを新しくしてくれれば(条件を吟味して暖房負荷値を再設定すれば)、先生の数値にもっと近づくと思います。
◆◆◆高気密・高断熱住宅エアコン◆◆◆
ここからは、高気密・高断熱住宅に採用されている色々なエアコン方式をみて、自分がいいと思う方式を紹介します。
まず、外していくエアコン方式は従来からの個別空調(各部屋にエアコンを付ける方式。)。これは、能力的にもいりません。
1台で全館空調。これもいかがなものかと。エアコン屋の常識として暖かい空気は軽くて上に溜まりやすく、冷たい空気は重くて下に溜まりやすい。
つまり、暖房を考えると冬は1Fにエアコンがあったほうがいいし、夏を考えるとエアコンは2Fにあったほうがいい。あっこれ結論です。1Fに1台。2Fに1台です。
能力をどうするかは考え方です。2台を足して必要能力とするか?1台づつ必要能力として冷房用・暖房用と使い分けるとか、1台故障したときのバックアップと考えるかなど。
自分は1台づつを必要能力で選定して必要なければ使わなければいい。バックアップ用でもいいと思います。
さて、ではどんなエアコンがいいかですが、1Fは「床下エアコン」がいいと思います。暖房時に床が冷たくないし冷房時は逆に床がひんやりして気持ちいいです。
工務店さんなどが工夫されて壁掛けエアコンや床置きエアコンを床下で吹かせている画像をみますが、これにはちょっとだけ疑問が。
もともとそれらのエアコンはそこそこの風量はあっても静圧がないから温度むらとかないのかな〜って。
次に2Fのエアコンですが、これは「ビルトイン形」がいいです。先程の温度むらではないですが、ビルトインエアコンならダクトを通じて各部屋を冷暖房します。
この記事を書いてから4〜5年が経ち、住宅性能の向上、エアコン(全館空調)方式の開発がありましたので、それを次の
ページに、まとめたいと思います。(2020.6)
また、ブログで「ルームエアコンの選定」という記事も書きましたので、ご興味がある方は、こちら。
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